長崎大学歯学部同窓会創立15周年記念学術講演会

 シンポジウム
「長崎県歯科医師会はなぜ、フロリデーションの実現を目指すのか」
(フロリデーションが意味するもの)

長崎県歯科医師会公衆衛生担当理事
有田 信一 先生

 [略歴]  
昭和52年 福岡県立九州歯科大学卒業
昭和56年 ありた小児・矯正歯科開業
  現在に至る

 [学会・社会活動]
・日本矯正歯科学会認定医
・日本小児歯科学会認定医
・歯学博士
・西日本矯正歯科学会理事
・長崎大学歯学部非常勤講師
・長崎県歯科医師会理事(公衆衛生担当)
・長崎フロリデーション協会副会長

 [抄録]
1 長崎県における歯科保健活動とその評価
1) かかりつけ歯科医を中心としたう蝕予防戦略の限界 かかりつけ歯科医を中心とした歯科保健管理を模索中ではあるが、「現社会保険制度上でのかかりつけ歯科医を中心としたう蝕予防の戦略には限界がある」が現時点での評価である。(資料:長崎市歯科医師会事業、「すくすく健診」結果 より)
2) 小児のみを対象とした集団的予防戦略の限界 従来、公衆衛生的な手段として、推進してきたフッ化物洗口は一部の小さな市町村や学校、幼稚園、保育所において実施されているものの、その普及拡大の速度は緩い。(資料:長崎県フッ化物洗口実施施設調査結果 より)
2 新たな発想での歯科保健戦略
1) 社会のセーフティネットとしての歯科保健政策 子供の健康は社会の優先課題であり、今後予想される親の就労形態の多様化や女性の生活形態の変化を念頭に入れた歯科保健戦略でなければならない。
(1)保健政策は住民の一人一人の能力を十分に発揮し、自立と尊厳を持って生きることができるセーフティネットであるべきである。
(2)保健政策は年齢・性別・障害の有無にかかわらず、う蝕予防効果が期待できるバリアフリーであるべきである。
(3)歯科保健政策は少子高齢化時代に対応できる予防戦略でもあるべきである。
2) フロリデーションをベースにおいた地域歯科保健システムの提示 長崎県歯科医師会は過去の反省に立ち、今後のあるべき姿として、フロリデーションをベースとした地域歯科保健システムを提示した。
フロリデーションの利点は
@住民参加型の予防法であること(実施決定には住民の意思が反映される) 
Aより質の高い1次医療の供給ができること 
B歯科治療技術の保障を高めることができる 
C社会保険制度の中での効率的な医療供給が可能となるなどである。
3) 結論
フロリデーションは歯科医師会、住民双方にとって、有効な歯科保健政策である。その実現のためには歯科医師会は社会への貢献策を明示することと、住民一人一人が社会の主要メンバーという立場で、保健政策を冷静に判断する姿勢が不可欠である。