長崎大学歯学部同窓会創立15周年記念学術講演会
企画にあたって
長崎大学歯学部同窓会
創立15周年記念学術講演会実行委員会
21世紀を迎え国政や経済界では大改革が叫ばれる中、歯科界においても、医療保険制度改正、介護保険制度への対応、歯科医師需給問題、卒直後研修医制度、歯学教育、かかりつけ歯科医の問題等、21世紀の歯科医療のあり方、歯科医師のあり方が問われています。これらの諸問題には、開業医の団体である歯科医師会や、教育者や研究者がいる大学歯学部、専門家集団である学会が総力を結集して解決にあたる必要があります。本会は、会員の福利および会員相互の親睦を図るとともに、歯学の進歩向上ならびに母校長崎大学歯学部の発展に寄与することを目的として1987年に設立されました。以後、講演会開催あるいは会報などによる情報発信を中心に、日常臨床のヒントだけに留まらず、時局問題も含め今後進むべき道を示唆できるような場面
や状況の設定を念頭におき、社会に役立つ、国民の健康に貢献する歯科医師、そういった視点を会員全員に持っていただきたいと願いながら活動を行ってきました。幸い同窓会会員は、開業医、勤務医、大学関係者、研究者、行政職など多岐にわたっており、前述した諸問題に対して今後この利点をふまえた活動が展開できると確信しています。
国民の口腔内の状況に目を転じてみると、歯科医師過剰といわれる現在、未処置歯数は確かに減少していますが、処置歯の数は増大し、結果
としてう蝕経験歯数に大きな変化はありません。すなわち健全な歯が育っていないということです。また、診療室でのう蝕予防や管理は、受診した人に限られるため、未だ低い受診率の日本ではすべての人に有効な手段となり得ていない現状があります。
政治や経済の世界がそう求められているのと同様に、今後歯科医師は真に国民の利益、健康につながる仕事を行う必要があり、う蝕予防に関して良好な結果
を国民に示すべきです。診療室におけるセルフケアの啓蒙と実践は当然のことながら、子供から高齢者までのすべての人々のう蝕予防のため、社会環境の整備、公衆衛生活動を中心としたパブリックケアの考え方も持った歯科医師が求められています。本同窓会は創立15周年を迎えるにあたり、そのような観点から、「むし歯予防の世界標準“水道水フッ素化を探る〜長崎から21世紀への提言〜」と題して、記念の学術講演会を企画し開催することにしました。
歯科医療従事者が国民にう蝕予防に関する正しい情報を提供し得る専門家(存在)であることを期待し、この講演会がその一助になればと思います。