長崎大学歯学部同窓会創立15周年記念学術講演会
長崎宣言2001
我が国においては、従来、歯科疾患は個人的な問題として扱われてきた。すなわち、歯科疾患を健康問題の一環としてとらえる意識が低く、社会システムとして予防を図っていく姿勢が希薄であった。しかしながら、歯科疾患は、有病率が極めて高いことや生活の質に及ぼす影響が高く、社会的な問題であること、全身の健康状態と密接に関連している可能性があることなどから、その対応についての責任を個人にだけ求めるべきものではなく、社会的なレベルでの取り組みが要請されている。口腔領域の2大疾患である「齲蝕」と「歯周疾患」に対する予防対策については、国内外の多くの調査研究により、予防が十分可能であることが明らかになってきている。特に齲蝕に関しては、その科学的アプローチにより、子供達の罹患率の劇的減少と軽症化、高齢者の根面
齲蝕など、疾病の量的・質的変化が世界各国で報告され、すべての人々が健康になる社会的基盤が確立されているが、我が国においては未だ不十分といえる。
WHOヘルス・プロモーション健康宣言では、「環境問題と健康問題の両面が中核的で最も優先性の高いものとして位
置づけられ、日々の政策課題のなかで最も大きな関心が示されるべき」と述べられており、これからの歯科保健医療にかかるベクトルは、疾病対応型の歯科保健医療から早期予防(1次予防)のみでなく、あらゆる領域の機関、関係者と連動し、疾患の発生を予防する環境づくり(0次予防)の推進への方向転換が望まれている。
ここに、我々長崎大学歯学部同窓会は、すべての人々の健康を守るという基本目的のために、21世紀の口腔保健にかかる問題に対する基本的スタンスと今後の活動方針を明確にするものである。
1.公衆衛生の向上および増進に寄与する。
2.基本的な権利である健康を擁護し、国民・地域住民を主体者として、行政や関連機関・団体と連携を図る。
3.地域における歯科保健施策の実施に積極的に参加する。
4.歯科保健医療に関わる正確で最新の情報と活動の成果を提供し、社会に還元する。
5.生涯にわたる歯科保健を推進するための社会的基盤として、う蝕予防のグローバルスタンダードであるフロリデーション(水道水フッ素濃度調整)を推奨し、地域における合意形成とその実現に向けて働きかける。