平成17年度学術講演会 |
平成17年9月25日(日)、歯学部5階第1講義室にて、表記、学術講演会を行いました。
今回は、4月より井上会長の体制となり、初めての講演会となりました。 講師として、長崎市でご開業、現在、長崎県歯科医師会社会保険理事としてご活躍の鳥越康彦先生と1期ご卒業で、同じく長崎市ご開業の池田守先生のお二方をお招きいたしました。午前中は池田先生に、臨床面
のご講演をお願いいたしました。講演では、まず、自分(または自院)のスタンス、コンセプトを、ビデオで紹介の後、それを具体化した歯周病治療、また、インプラント治療についてスライドを用いて説明がありました。歯周病治療にかかわらず、最初の診断が重要であり、それを患者様にEBMに基づき提示する手段について、先生は、自院でのコンピュータ、デジタルカメラ、セットアップ模型等の使用例をお話になり、それを織り交ぜながら、確実な予後を持たせるための1口腔単位
での診断と、診断に基づく治療の具体的手法についてお話がありました。トピックとしては、先生は、いわゆるGBRとしての骨充填剤やメンブレンの使用が少なくなったと講演されました。理由としては、人為的に作られた骨の安定性への疑問があるのではないかと思われますが、現在は主に矯正的歯根の挺出による骨の造成など、生体(歯根膜)による骨造成を行っているというお話でした。講演全体としては、歯周組織の安定のための骨造成と角化歯肉の歯周外科による維持、造成を強調されていたと思います。また、このような術式に加え、インプラント等も多くのケースをこなされておりますが、開業医として、患者の侵襲を最低限に抑えていくための“シンプルな術式”、“予後を見据えた診断・処置”・“道具、材料の選択”という面
で講演の中に様々なエッセンスが含まれていたと思います。この後、熱を帯びたご講演は、同窓会員として、他の講演では話されない、自院でのスタッフ管理についての具体的なお話に移りました。チーム医療を支える一員としてのスタッフのモチベーションの管理として、目標の売り上げ、毎日の到達度のスタッフへの提示と、毎年1回、売り上げにおける、そのスタッフの能力給(比率)を決めて、毎月の売り上げに比率を乗じて給与を算出する体系をお示しになりました。池田先生は、現在、長崎市歯科医師会学術理事として、多くの有益な講演会を設定する一方、インプラント治療を中心に各所でご講演もこなされており、大変お忙しい中ではありましたが、今回の講演会をご快諾いただき、さらには、同窓会の講演に演者として招待されたことを大変うれしく思うとおっしゃっていただきました。今後とも先生のご活躍を、心よりお祈りいたします。
午後の講演は、同窓会としても初めての試みとなりますが、鳥越康彦先生に主(?)に歯周治療関連における保険治療での算定について、ご講演をお願いしました。講演を依頼しました背景として、昨今、長崎県では、多くの保険医停止事例があり、同窓会員よりこのような事例のないよう、もう一度勉強しようというということがありました。今年5月に、長崎県におきましては、県社会保険委員会より“保険診療ABCモという冊子が発刊され、これが、算定の基本になっているところですが、内容としては、全国同一のルールを目指す上でも教科書的なものと言えます。この本の紹介に引き続き、歯周病治療の診断、治療のガイドラインに始まり、Pメインテナンスにいたるまで、間違えやすい、また、算定上誤りの多い事例をスライドでご講演いただきました。この後、長崎県における保険医停止事例の概要を含め、今後の保険診療の展望などのお話がありました。特に、歯周治療においては、GBR、エムドゲイン、抗真菌剤の使用など混合診療に関わる部分もあり、現在のルール上は問題のある面
も多いという指摘もあり、歯科医療の今後を考えた際、混合診療を認めていくしか、生き残りの道はないのではないかという発言もありました。これにつきましては、10月1日に福岡県歯科医師会館で行われた、九州各県社保担当者会議におきましても、長崎県から日歯への要望として同様の発言をされています。長崎県においては長大歯学部同窓生の占める割合も増えてきており、今後、長崎県における歯科活動において、当然、イニシアチブをとっていかなければなりません。その中で、”長大にはがんばってもらいたい。しっかりしてもらいたい“という声をよく耳にします。鳥越先生もそのような考えをお持ちで、その熱い気持ちの伝わるご講演であったと思います。
学術担当理事 岩本宏明(9期)