平成11年度第3回学術講演会 |
平成12年2月26日(土)、午後3時より長崎大学歯学部5階第一講義室にて、平成11年度の学術講演会を行いました。受講者は、約80名でした。
講師には、当大学の1986年卒の第2期生であります、浪越建男先生をお招きし、「地域に根ざした歯科医療を模索する」という演題でご講演いただきました。講師の浪越先生は、卒業後、当大学の第二補綴科に大学院生として入局され、「いわゆる歯科用金属アレルギーに関する研究」にて学位
取得されました。その後、助手として第二補綴科に在籍し、平成6年に香川県高松市にて開業され現在に至っております。開院5年のあいだにほぼルーティンに□腔内写
真撮影、サリバテストによるカリエス・リスクチェック、PTC、PMTCによるメインテナンスを実践するなど、予防を基確に据えたデンタルチームとしての診療体制が整備されてきたそうです。また、地域歯科保健活動も積極的に取り組んでおり、昨年、学校歯科医となっている小学校が「第38回日本学校歯科保健優良校表彰」において最優秀賞(文部大臣賞)を受賞されております。
また、公衆衛生学会でも、シンポジストをつとめられるなど、ご活躍されております。
講演では、まず自分の歯科医院での滅菌・消毒のシステムに関してをお話していただきました。通
常の歯科医院では、コストや意識の問題で完全に滅菌が出来ていないものでも、たとえばタービンなどもオートクレーブ滅菌するなど徹底してインフェクションコントロールしていることや、そのときのコストも計算されておりマネージメントについてもわかりやすくお話ししていただきました。次に自分の校医となっている小学校で実践している予防システムについてご説明されました。非常に熱意をもって地域医療にたずさわっているのがひしひしと感じてきました。また、その成果
もすばらしいもので、確実にカリエスの減少が認められていました。さらに自分の医院でのカリオロジーのシステムづくりについての苦労や努力およびその成果
についてもお話ししていただきました。また、近年、「治療」から「予防」というのが世界の歯科医療の流れになっていることを説明され、日本の現状は、その流れに取り残されつつあることを説明されました。その一つは、世界の多くの国で水道水のフッ素化が進んでおり、その進行とともにカリエスの減少が認められているということでした。また、実際にアメリカの水道施設を視察されたときのお話などをしていただきました。より効果
的に「国民の健康を守り育てる歯科医療」を実現するためには、個人対応の予防プログラムの確立と並行し、公衆衛生施策として最も評価の高い水道水のフッ素化の実現が望まれることを強調しておりました.このように歯科医療の向上を自分個人の病院単位
ではなく、非常にグローバルな単位で考えており、それを実現させよう努力されているのが伝わってきて感動さえおぼえる内容でした。活発な質疑応答もおこなわれ非常に充実した講演会でした。講演後も浪越先生の熱意を含めてよかったという意見が多くありました。
学術 北浦英樹