平成12年度第1回学術講演会
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 平成12年5月20日(土)、午後3時から午後6時まで長崎大学歯学部5階第一講義室にて、平成12年度の学術講演会が行われました。講師には、長崎大学歯学部歯科保存学第一講座の久保至誠先生をお招きし、「最近の歯科治療の変革」という演題でご講演をいただきました。
 ウ蝕(虫歯)の治療では早期発見・早期治療が非常に効果的である。しかし、治療成績に問題があればかえって望ましくない結果 を招くことになる。
 沖縄において2年間の修復物の臨床成績によるとアマルガム修復によるもので予後良好が83.5%であるのにたいして、レジン修復では62.6%となっており、その差は脱離にある。また、臼歯部においてもアマルガム修復、インレー修復に比較してレジン修復の事故率は高いものとなっている。
 このように審美障害や知覚過敏をともなうWSDの臨床成績は、ほかの症例に比較すると良好とは言い難く、従って18年前では、主訴に応じるだけでリコール無しだったが、最近7年はリコールを行うようになった。
 平成19年には、日本の人口が約1.3億人に達し、さらなる高齢化社会を迎えるなかでこのような症例が増加することが予想される。このような問題の解決をはかるため、新しいう蝕治療の流れとしてカリオロジーに立脚した修復学が望まれる。つまりう蝕が生じた背景あるいは要因を患者別 に科学的根拠に基ずいて解明することが重要であると考え、従来からのう蝕診査基準を再考するとともに患者個々のカリエスリスクの診断を行うなど、総合診断の重要性を推奨することで、そのリスクファクターとしては
 1. う蝕原性菌の数
 2. 口腔衛生状態
 3. 食習慣
 4. 唾液の分泌量、緩衝能
 5. フッ化物の使用状況
 6. う蝕経過観察期間中
などがあげられる。
 以上の様な話題でできるだけ歯を削らないで治療する方向に持っていきたいという希望を熱く語って いただきました。 また、ご自身のオーストラリア留学の話やEBMの 話題、さらには歯科医師需給問題にまで鋭い観点か らのご指摘をいただきました。

学術 石田豊